2006年10月03日

読書の秋に田中芳樹。

写真にあまり意味なし。

高校生の頃、ずいぶん田中芳樹の本を読んだ。高2の秋くらいかなあ。『銀河英雄伝説』10巻をボンバー君に借りてあっというまに読んでしまった。とてもよく出来たスペースオペラだった。
田中芳樹はタイヘン遅筆な作家ではあったけど、なんせ貧乏学生だったから、出るもの全て読めるわけではなかった。とりわけぼくは偏った読者で、スペースオペラ中心に読んでいた。たとえば『銀河英雄伝説』以外では『タイタニア』(未完)や『七都市物語』(これも未完。他作家によるアンソロジーが出ている)など。

ほかにはファンタジー系の小説をよく読んだ。『自転地球儀世界』シリーズ(未完、というよりは他の作家にプロットまる投げ状態)とか『夏の魔術』シリーズとか。とくに『夏の魔術』シリーズはとてもよく出来たファンタジーだった(4巻で完結したが、惜しむらくは最終巻の出来の悪さ。ほんとうにひどいもんだ。読むんだったら最初の3巻でとどめて欲しい)。

友だちYにはずいぶん受けが悪かった。「またこんな本読んでるの?」とずいぶん冷たい視線を投げつけられたものだ。まあ、俗な本ではあるが。

 左の胸ポケットに三週間の休暇、右の胸ポケットに二十万円、それが能戸耕平の自由を、さしあたりは保障していた。この両ポケットが空になったとき、彼は、散文的な日常に、大学の勉強とアルバイトの生活に、もどっていかねばならない。だが、まあ、あまり思いわずらうのはよそう。まだ旅は、はじまったばかりなのだから。
『夏の魔術』の冒頭。
耕平はひとり旅の途中、12歳の快活な少女、立花来夢と出会い、異界と現実のはざまにある「黄昏荘園」へおもむく。ここからはもう、熱血青年が女の子をかばいながら困難に立ち向かう王道ファンタジーが展開していくわけだ。

田中芳樹の文体は読みやすい。しかも一読して田中芳樹だとわかる。「気の利いた」直喩の効果的な使用、独特の「軽口」や「かけあい」、内心の表出。

 梯子がやってきた。伸ばせば五メートルにも達するであろう折りたたまれた木製の梯子だ。それを執事は肩にかついで、何万人もの兵士を指揮する将軍のように足どりでサロンにはいってきた。彼の視線がフランス窓に向き、耕平に向けられた。落ち着きは失われなかったが、かるい溜息が漏れた。
「これはいささか乱暴なことをなさいましたな。このカーテンは多少は由来もあり、当家の自慢でございましたが」
「悪かった。来夢を助けだしたらきちんと話をつけるから、そのときのことにしてくれ」
「ではそういうことにさせていただきます。ところでこの梯子はどういたしましょうか。あいにくと当家には絵具がございませんので、お役に立てないかもしれませんが」
 表情をまったく崩さずに執事は言い、耕平が口を開きつつも言葉につまったとき、北本氏が助け舟を出した。
「予定変更だ。外壁に梯子をかけて三階に上りたい。手伝ってくれんかね」
「この雨と風の中をでございますか。せめてもうすこし天候が回復してからになさってはいかがでしょう。いえ、出すぎた申しようではございますか、お客さまのおためを思いましてのことでございます」
「天気予報はどう言ってる?」
「存じません。当家にはテレビやらラジオやらといった俗なものはございませんので」
それにキャラクターの造形にも特徴がある。田中芳樹の小説は、年齢が離れた2人がコンビとなって主役となることが多い。
たとえば、『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーとユリアン・ミンツ。『自転地球儀世界』の周一郎と多夢。『夏の魔術』の耕平と来夢、もうひとりの重要な登場人物、北本氏など。
毒舌家も多く登場する。『銀河英雄伝説』はヤン・ウェンリーをはじめ毒舌家だらけだし、『薬師寺涼子』シリーズの主役も超毒舌家だ

まあ、彼の『蒼龍伝』シリーズも、『アルスラーン戦記』も、『薬師寺涼子』シリーズも、最近の中国関係の作品も、全部読破したわけじゃない。なにも考えずぼんやり読むには、田中芳樹はとても気持ちのいい作家だ。また読み始めてみるかな、と思っている今日この頃。

『夏の魔術』田中芳樹夏の魔術
田中芳樹

単行本(ソフトカバー): 210ページ
講談社
2000-07
ASIN: 4061821423
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『窓辺には夜の歌』田中芳樹窓辺には夜の歌
田中芳樹

単行本(ソフトカバー): 207ページ
講談社
2000-10
ASIN: 4061821539
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『白い迷宮』田中芳樹白い迷宮
田中芳樹

新書: 213ページ
講談社
2001-01
ASIN: 4061821636
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『春の魔術』田中芳樹春の魔術
田中芳樹

新書: 190ページ
講談社
2002-09
ASIN: 4061822497
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ラベル:読書 田中芳樹
posted by Dr.DubWise at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | words | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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