2006年10月17日

高山博・池上俊一編『西洋中世学入門』

『西洋中世学入門』(高山博・池上俊一編)を読了。これは「西洋中世史」の教科書ではない。「西洋中世学」の教科書。

どんなふうに違うのかというと、目次を見るとよくわかるんじゃないだろうか。

序 論 西洋中世学の世界

第一部 西洋中世研究に必要な技術と知識
 第1章 古書体学・古書冊学
 第2章 文書形式学
 第3章 碑文学
 第4章 暦学
 第5章 度量学
 第6章 古銭学
 第7章 印章学・紋章学
 第8章 固有名詞学
 第9章 歴史図像学
 第10章 中世考古学

第二部 西洋中世社会を読み解くための史料
 第11章 統治・行政文書
 第12章 法典・法集成
 第13章 叙述史料
 第14章 私文書
 第15章 教会文書

アペンディクス
第一部
 1 研究入門/2 学術専門誌/3 文書館・図書館/4 辞書・事典類
第二部
 1 暦/2 度量衡・貨幣/3 人名対照表/4 地名対照表
なぜこのような補助学の教科書が書かれねばならなかったか。序論にはこうある。

中世ヨーロッパ研究に関して、日本にくらべてはるかに長い伝統を有する欧米においては、ラテン語原史料を読み解くための基礎的技術・情報が学会の共有財産となっており、大学・大学院教育で体系的に教えられている。また、そのようなノウハウに関わる研究の蓄積も厚く、研究者の数も多い。わが国の場合は、こうした基礎的技術・知識に携わる研究者がほとんどいないというだけでなく、ラテン語原史料を読み解くために不可欠な古書体学や暦学などの歴史補助学の成果も、体系的に整理されていない。これまで、日本のいるかぎりこのような技術・知識を習得するのは極めて困難であった、と言わざるをえない。
理論ではなく、そこに行き着くまでの学、実践としての学。
この本は各分野の要約だけでなく最新の成果も簡単に紹介されていて、ぼくみたいな西洋中世史を専門に学ばなかった人間にも面白く読める。さらに豊富な資料(アペンディクス)がついていてありがたい。度量衡の比較対照表や聖人祝日一覧、文献一覧などはかなり有益。古典文学を読んでいると、実は度量衡の解説が不親切だったりする。これだけコンパクトで「使える」度量衡対照表はこれまでなかったんじゃないか。

ネットをつうじて原史料にあたることが、比較的簡単に出来るようになってきた。
これまでの日本での西洋中世史は、原史料に触れることが困難だったため、どちらかといえば本場での学説紹介という側面が多かった。ようやく日本でも本格的な西欧中世史研究が展開されるようになりつつある。たとえば佐藤彰一の『修道院と農民』のような労作も生まれているわけで、これからがずいぶん楽しみな分野だったりする。こんな教科書で勉強したかった。

『西洋中世学入門』高山博・池上俊一(編)西洋中世学入門
高山博・池上俊一(編)

単行本: 395ページ サイズ (cm): 21 x 15
東京大学出版会
2005-12
ASIN: 4130220195
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『修道院と農民―会計文書から見た中世形成期ロワール地方』佐藤彰一修道院と農民―会計文書から見た中世形成期ロワール地方
佐藤彰一

単行本: 775ページ
名古屋大学出版会
1997-02
ASIN: 4815803110
by G-Tools
posted by Dr.DubWise at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | words | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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