2006年12月17日

Coming From Above――ゲイリー・ウィニック『シャーロットのおくりもの』

ゲイリー・ウィニック『シャーロットのおくりもの』(2006/米)

児童向けファンタジーの古典『シャーロットのおくりもの』の映画化。FBSさんの試写会にあゆむさんとペアで招待された。西鉄ホール。ちなみに吹き替え版です。女の子二人、カップル、年配の夫婦、子ども連れの親子など、なかなか客層は広そう。

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ゲイリー・ウィニックという名に記憶がないので検索してみると、ヴェンダースが撮った『ランド・オブ・プレンティ』(2004)に製作としてタッチしている。いくつか自身が監督している作品もあるけれども、ぼくはすべて未見。
どちらかというとこの映画、ダコタ・ファニングに期待していたが、実際観てみるとあまり彼女が出る必然性はない。むしろもっと無名の子役のほうが良かったような気がする。ストーリーは原作に忠実でヘンなひねりはない。だからこそファンタジーのエッセンスが凝縮されているように思う。

たしかに動物が主人公の映画ってのは、アントロポモルフィズムやオリエンタリズムに陥る可能性が指摘されてなかなか楽しめなかったりもする。そりゃあこのご時勢、オリエンタリズムに敏感にならざるを得ない。映画は資本主義(というか消費主義)とグローバリゼーションにモロにつながった芸術だ。だけど、こういう友愛を謳う映画は、そんなムズカシイことはいったん棚上げにして、子どもと一緒に楽しんでもいい。

ゲイリー・ウィニック『シャーロットのおくりもの』(2006/米)

『シャーロットのおくりもの』は、ブタのウィルバーとクモのシャーロットの友愛のお話。
ウィルバーは、シャーロットの名前を「いい名前!」と言う。いやウィルバーにとってはどんな名前も「いい名前!」 ここに名前と友愛の秘密があるように思う。

挨拶のはじまり、つまり目の前に彼女/彼の名前を呼ぶこと。クモのシャーロット、ネズミのテンプルトン、羊のサミュエル、ガチョウのグッシーとゴリー、馬のアイク、牛のベッツィー。この世界にひとつしかない名前を呼ばれて、友愛が始まる。(そう、ぼくは師レヴィナスを思い浮かべている。だけどあんまり難しく考える野暮はよそう。)

アイクにはシャーロットの醜さが耐え難い。姿形だけではなく、ハエのような小虫を網で捕らえ「血」を吸うということも、アイクにとって倒れてしまうほど忌まわしいことだ。
しかし、そんなアイクの隣で、ウィルバーはシャーロットの名を呼び、その姿を「綺麗だ!」と誉める。シャーロットは、自身がいい名前を持ち美しい存在であることを、おそらく生まれてはじめて意識したのだろう。だからウィルバーの命を守ろうとする。

ゲイリー・ウィニック『シャーロットのおくりもの』(2006/米)

映画が終わって館内が明るくなると、後ろに座っていた女の子たちが、涙声で、でも笑いながら「〈ぴかぴか〉と〈ひかえめ〉はないよねえ」と言っていた。ぼくもそれを聞きながら笑ってしまった。
シャーロットが紡ぐ〈とくべつなブタ〉〈さいこう〉〈ぴかぴか〉〈ひかえめ〉というユーモラスで美しいことばたち。みんなウィルバーのことだ。そこに紡いだことばについて、シャーロットは「あなたそのものを表したことば」とウィルバーに伝える。名前を呼んでくれたお礼に空に架けられたのは、キラキラ輝くことば。まるで大切な秘密を明かすように、彼女はそっとウィルバーに伝えた。

与えることば、与えられたことば、そしてその神秘。
人間の大人たちはシャーロットがどんな風に生きたか知らない。だけど、たしかにその神秘は人間にも伝えられた。
納屋の仲間たちは皆、アイクやテンプルトンも、ウィルバーと同じように彼女を愛し、彼女の子どもたちの命を愛する。ブタがクモの名前を呼ぶことからはじまった「小さくてよいこと」が、少しだけその町を変えていく。

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Help Is Coming From Above.
アメリカでのポスターには、こうコピーが書いてあった。これは決して宗教的な文句じゃない。
ぼくの信念は「幸せは突然のプレゼントのようなもの」。このフレーズとおりだ。空から降ってくる幸せ。雪を見ることができる幸せ。

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あゆむさんにはちょっと難しい映画だったかな?
でもパパとママは、シャーロットのようにいたいのだよ、いつでもね。

ゲイリー・ウィニック『シャーロットのおくりもの』(2006/米)

ちなみに字幕版にはジュリア・ロバーツやスティーヴ・ブシェミ、ロバート・レッドフォードが声優として参加している。どんな感じなんだろう。特にブシェミの声って!
吹き替えのシャーロット役の声、鶴田真由が素晴らしい。思慮深く賢く誠実なシャーロットをよく演じていると思う。

動物たちのシーンが必然的に多いけれども、この手の映画で感心するのはやっぱりCG。おおよそ実写で撮って、それをモーフィングで動かしている。クモのシャーロットだけはオールCGなはずだけど質感にほとんど差が感じられない。ただでさえ自然が多い背景なんだけど、CGと違和感がないのはたいしたもんだ。
エンディングのアニメーションが本当に素晴らしい。テーマ曲サラ・マクラクランが歌う「オーディナリー・ミラクル」がまたよくって、涙腺がうるんでしまう。だから最後まで席は立たないこと。

『シャーロットのおくりもの』公式サイト

ゲイリー・ウィニック『シャーロットのおくりもの』(2006/米)

シャーロットのおくりもの(2006/米)
Charlotte's Web

製作総指揮 ポール・ニーサン / バーニー・ウィリアムズ
  / エドガー・M・ブロンフマン / ジュリア・ピスター
製作 ジョーダン・カーナー / パラマウント・ピクチャーズ
監督 ゲイリー・ウィニック
脚色 カレイ・カークパトリック / スザンナ・グラント
原作 E・B・ホワイト
撮影 シーマス・マッガーヴェイ
音楽 ダニー・エルフマン
編曲 ピート・アンソニー / スティーヴ・バーテック
衣装 リタ・アイラック
編集 スーザン・リッテンバーグ
特撮 ティペット・スタジオ
出演 ダコタ・ファニング / ケビン・アンダーソン / エシー・デイビス
声 ジュリア・ロバーツ / オプラ・ウィンフリー / スティーヴ・ブシェミ
  / ジョン・クリーズ / セドリック・ジ・エンターテイナー
  / キャシー・ベイツ / レバ・マッケンタイア / ロバート・レッドフォード
  / トーマス・ヘイデン・チャーチ / アンドレ・ベンジャミン
  / サム・シェパード
吹替 鶴田真由 / 福田麻由子 / 山寺宏一 / 松本伊代 / ヒロミ
  / LiLICo / 千原兄弟・靖史 / 千原兄弟・ジュニア / 高橋英樹
配給 パラマウント・ピクチャーズ / UIP
E.B. ホワイト『シャーロットのおくりもの』シャーロットのおくりもの
E.B. ホワイト E.B. White(作)
ガース・ウィリアムス Garth Williams(絵)
さくまゆみこ(訳)

単行本: 223ページ サイズ (cm): 21 x 15
あすなろ書房
2001-02
ASIN: 4751518895
by G-Tools

 
posted by Dr.DubWise at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | lumen opacatum | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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