2007年05月05日

年老いた樹と小さな草とともに

散る花。

  夕照から

紅ゐの夕陽あび
薄くれなゐの雲がゆく
なにを 私は祈りなにに呆けてゐたのだらう
かたへのあぢさゐの花は
犇めきあつて稚い唇に口々に
さうださうだしづかなるこの夕暮れのひとときに・・・と
そのあとは昏れてゆくけはいに含まれて
また深まつてゆく夕べ底知れぬ時の移りよ

 雲がゆく
 ゆくともなく
 しかし つひに
 ゆく

さうして夜へ
ああこのうつりかはりのあひまあひまを
あやまたずいのちがつなぐとは!
これらすべての
これらすべての深く尨大な準備は何の為だらう
答へともなく
問ひにもあらで
われらが死ぬるために
われらが生きるために

星辰あきらかにきらめく
この天空の下でこの夜は
窓あけたままねむらう
年老いた樹と小さな草とともに

夕べには夕べの風
朝には朝の風のそのなかで
枯葉を振り落しつつ
いつかわれらは
永劫に
もらひとられてゐた と
巨大きな松が巨きな声で歌つてくれる
わが身の変移幻影よ
+ + +

20代の堀田善衛による詩。戦中に書かれたせいもあって、死の感覚、透明な死の感覚が浸み透っている。堀田もどこかで20代の頃の日常かつ非日常としての死について述べていたと思う。

堀田善衛『別離と邂逅の詩』別離と邂逅の詩
堀田善衛

単行本: 197ページ
集英社
2001-05
ISBN-13: 978-4087745153
by G-Tools

posted by Dr.DubWise at 15:36| Comment(1) | TrackBack(0) | words | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
中々いい感じのブログですね^−^
また、遊びに来ますね。
今日は、検索を使って訪問しました。
Posted by 情報商材レビュー@ぶりぐる at 2007年05月05日 19:13
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