2007年01月21日

incidents 06

incidents 06

夢。

なにかのテレビ番組だろうか。
三島由紀夫の連続ポートレート写真。リムジンの中の三島は後ろのシートに座っている。真向かいのシートから男が身を乗り出し、三島にキスをする。驚きながら身を引く三島。だがその顔にははみかみがある。幸福感に満ちた写真。次に青空を背景にした三島の横顔。ナルシシズムと強い自信。
まるでテレビのように、数枚の連続写真が横に流れていく。必ず写真の三島の顔の部分に、フォーカスマークがつく。少し不思議に思う。

シークエンスが替わる。三島のポートレイトを撮影した写真家の写真。細江英公かと思うが、違う。ずいぶん年寄りで短い白髪、茶色のサングラス。ビーチパラソルの下に折りたたみ椅子とテーブル。撮影そのものは助手に任せているようだ。ディレクタータイプの写真家だ。まるで黒沢明のような風貌だが、どこかホモセクシャルな印象がある。
よく見ると、唇をペンキのような鮮やかな赤で化粧をしているが、唇全部ではない。上唇の下の部分が特に赤い感じ。顔にフォーカスされたショット。化粧ではない。まるで「ペンキ塗りたて」のように、その部分がつややかに濡れている。伸びた髭にもペンキがかかっている。
ぼくは、歳によらずお洒落だな、と思う。

+ + +

夢。

なにかの研究所。〈ぼくら〉は男女数名で特殊な疫病の研究をしている。研究所は奥に細長く、最奥部にどんな施設があるのか、〈ぼくら〉さえ知らない。
〈ぼくら〉は言葉では表現しがたい連帯感で結ばれている。使命感、というよりは秘密結社めいたもの。〈ぼくら〉と外界との接触はいっさいない。

施設に髪の長い子どもが現れる。10歳くらいだろうか。少年か少女か分からない。現れたり消えたりする。昔の特撮映画のようだ。探してみてもどこにも見つからないのに、不意に機器の間から現れたりする。とても不思議に思うけれど、いつのまにか〈ぼくら〉はこの子を受け入れ、愛おしく思うようになる。

あるときこの子が「お父さんの様子がおかしい」と助けを求めて〈ぼくら〉のところにやってくる。子どもの父親は研究所の最奥部にいるらしい。〈ぼくら〉は皆でそこに行くことにする。

最奥部は暗い。いわゆる「レベル4」の施設。〈ぼくら〉はガラス張りのレベル4施設入り口に立つ。ガラスの向こう側も暗くどんな実験が行われていたのかわからない。が、研究室の白いソファにだけスポットライトが当てられていて、そこに白衣の男が横たわっているのが見える。彼は死んでいる。体は腐敗しすでに膨れ上がっている。体液が周辺に流れ出し凄惨な光景だ。
子どもの父親はすでに死んでいたということだ。あの子にどう説明しようかと思う。隔離施設だから死臭がするはずないのに、〈ぼくら〉は死臭を感じる。
子どもは何故、「父親が死んだ」と言わず「父親の様子がおかしい」と言ったのだろうか。不審に感じるが、とにかく〈ぼくら〉でその子を大切に育てようと思う。

シークエンスが替わる。ぼくは白髪の男と施設の外で会っている。明るく青空が広がる暖かい日。白髪の男は子どもの父親だ。彼はぼくに背中を向けて立っているから表情は読み取れない。
彼は「その子は事故でずいぶん前に死んだのです。子どもの霊がまださまよっていたのですね」と悲しそうに言う。ぼくはあの愛らしい子どもがこの世に存在しないということにショックを受ける。同時に、子どもと二度と会えないことを悟る。
 
posted by Dr.DubWise at 08:31| Comment(0) | TrackBack(0) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月18日

incidents 05

ともちゃんが撮りました。

バー・B。

何故あんな夜更けにヤツとそこに居たのか、何を話し込んでいたのか、まったく記憶にない。
客はぼくたちだけで、ぼくたちはたしかボルスのジントニックを飲んでいた(あの頃は飲み疲れるとこれを飲んでいた)。

大きな窓からは隣のビルの灯り、天窓には真暗な空。

この店の女性オーナーがDJをしていて、ユルイ曲をつないでゆく。と、ヴァンゲリスの「ブレードランナー・愛のテーマ」が流れはじめる。ぼくたちは話すのをやめて聴き入る。
甘いメロディー。スクラッチ・ノイズ。夜の音楽。

+ + +

カフェ・M。

雑居ビルの狭い階段を昇ると、右手にガラス張りのカフェがあった。
ドアを開けるとすぐ正面にメニュー・カウンターがあり、オーストラリアに憧れる優しい顔をした店主がいる。大きな黒板にメニューが書いてあって、頻繁に新しいメニューが加わる。
イギリス人、フランス人、中国人、アメリカ人、ヒスパニック、ブラック・アフリカン・・・ この店は外国人のたまり場になっていて独特の無国籍感があった。

実はベーグルが美味しかったらしい。何十回も行ったはずなのに、ぼくは食べたことがない。ぼくはここのオムレツが好物だったからだ。

+ + +

旗亭・T。

川岸に建てられた古い問屋を改築した飲み屋で、窓際の席からはいつも夜の川を眺めることができる。窓を開ければ夜風が吹き込んできて、気持ちよく飲める。

この日は大雨で、ひとりで飲んでいた。荒れ狂う川面。瓦を叩く雨の音が店の内に染み入ってくる。
ぼくは日本酒を手酌で飲んでいた。こんな雨の日に飲みに来るヤツなんて粋狂だ、と自嘲気味に考えていた。ふいに日本酒がまわってくる。水の中で水を飲む。魚になったような感覚。

槐の葉を練りこんだという麺を食べて目が覚める。

+ + +

バー・G。

重く赤錆びたドアを開ける。暗闇の向こうからひそやかな話し声と、ジャズが響いてくる。店内にはほとんど灯りがなく、気をつけないとつまづいてしまうほどだ。石を積み上げたような、まるで洞窟のような内装。

この店にも一つだけ窓があった。縦に細長い、「すき間」といったほうがいいような窓。差し込む夜灯りは弱々しく寂しい。
ぼくはいつも、ギネスを飲みながらこの灯りに目を凝らすことになる。

+ + +

喫茶店・M。

マイルスの有名な曲名を冠した店。ここには古いBMWとジャズと若い女の子が大好きなオーナーがいる。
朝10時に開店すると同時に、ぼくはカウンターのいつもの席に座る。オーナーの気分がいいときは、ぼくのリクエストでレコードをかけてくれた。

食事は不味い(スパゲッティなんてサイアクだ)。コーヒーはまあまあ。でもメロン・クリーム・ソーダはとても美味しい。懐かしい味がする。

店の隅には古いアップライトピアノがある。ときどきオーナーの姪が弾いてくれる。最初の曲はきまって「Tea For Two」。
 
タグ:incidents
posted by Dr.DubWise at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月06日

incidents 004

雨に濡れている。

繰り返し見る夢。

子どもの頃から、たぶん小学生の頃から繰り返し見る夢がある。大人になっても、いまだに1年に1度か2度見る。どういう意味があるんだろうか。

荒涼とした砂漠のような土地。
見渡すかぎりの地平線のなかに高さ15mほどの発射台のような施設があり、ロケットらしき物体が据えられている。発射台の周囲は何故か水に濡れてびちゃびちゃになっていて、不潔な感じがする。遠巻きに数十人の人たちが集まって、発射を見守っている。みな紙袋に入ったポップコーンを手にしているのがおかしい。

ぼくは宇宙服のような銀色のユニフォームを着せられ、ヘルメットをかぶせられる。周囲の人々がぼくを拍手で迎えてくれる。このとき見知らぬ女の子も同行することになる。髪は長くゆるくウェーブがかかっている。どこかで会ったことがあるんじゃないかと考えるが、どうしても思い出せない。

発射の時間になり、カウントダウンが始まる。「ゼロ」という声と同時に、ぼくは緊張しながら操縦桿を「押す」。するとロケットは地面にものすごいい勢いでもぐり始める。すさまじいスピードで地球の中心へ向けて落下していく。ロケットの周囲に渦巻くマグマが窓越しに見えて、恐怖する。

+ + +

昨日見た夢。

ゴシック様式の巨大な聖堂の前にいる。天を刺す無数の尖塔。なぜかこの聖堂だけはセピア色に見える。
何段か石段を上ると巨大な門扉がある。マホガニだろうか、黒光りする年季の入った板に無数の彫刻が彫られている。地獄の門だ。ロダンよりも形式的で細密なレリーフ。

門扉には大きな錠がかけられているが、神父が厳かに鍵を開けてくれる。
内部は広く暗く内陣にステンドグラスもない。複雑な(網目のような)オジーヴが印象的である。どんな構造でこの建物は成り立っているんだろうか、と思う。

椅子が並んでいるが、誰もいない。いつのまにか神父もいなくなっている。どこからか香の匂いがする。見上げると頭上に何故か、長い鎖に吊り下げられた銀の香炉が揺れている。
ああ、P先生がミサを行われるのだなと思い、椅子に座って待つことにする。
 
タグ: incidents
posted by Dr.DubWise at 01:29| Comment(0) | TrackBack(0) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月28日

incidents 003

悪夢明け。

夢。

大きな伽藍にいる。丸天井で巨大な梁が放射状に伸びている。ところどころ窓があり、曇り空が見えている。それ以外に窓はない。床には白い大理石が敷き詰められていて、天窓の光がところどころ落ちている。カトリックの聖堂というよりも、イスラムのモスクのようだ。

壁には素晴らしいレリーフが刻まれている。高さ3メートルくらいだろうか。砂岩でできているらしく、触ると砂が落ちる。
レリーフは神話をモチーフにしているようだがよくわからない。すべて魚の頭をした人物ばかり。戦ったり、凱旋したり、王宮でくつろいだりしている魚頭の王族たち。

突然ぼくはこの大伽藍に出口が見当たらないことに気がつく。ということは、この大伽藍のこのレリーフのことを知っているのは、世界でぼくだけだということだ。

王のレリーフの前に座り、ぼくは幸せと不安に浸る。

+ + +

別の夢。

大きな川のほとりにいる。空が暗い。真冬の陰惨な空。ぼくは草が生い茂った川べりにひとり立っていて、遠く川下には橋が見える。橋には子どもが2人立っている。

ぼくは右手に臓物のような気味の悪いものがまとわりついているのに気がつく。左手で「臓物」を毟り取るが、まるでゼラチンのようにぶつぶつと切れ、ぐちゅぐちゅと崩れながら草むらに落ちる。血なまぐさい臭いが漂う。
川の水で手を洗おうとするが、暗くよどんでいて躊躇する。数メートル先に動物の死骸が浮いていて、油が浮き、吐き気がするような腐敗臭が漂ってくる。それでも両手の血の感触に耐えられず、ぼくは手を洗う。

しかし右手の「臓物」がどうしてもとれない。よく見るとこの「臓物」は手のひらから「生えて」いる。毟り取っても毟り取っても、手のひらから「生えて」くる。

ぼくは半狂乱になって「臓物」を毟り続ける。
 
タグ:
posted by Dr.DubWise at 22:40| Comment(0) | TrackBack(1) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月10日

incidents 002

窓

陰惨な空。雲が落ちてきそうだ。

+ + +

窓の外を女性が歩いている。白い服、白い靴、白い日傘。
正確な記述。ここから見ると、女性の服・靴・日傘は灰色に見えている。外に出て実際に見れば、「ほぼ」間違いなく白い服と白い靴、白い日傘なはずだ。
灰色の彼女を、どうしてぼくは白色だと「わかる」のか。

+ + +

笑っている男性。
その表情のまま、ずっとホームに立っている。凍りついたように。

+ + +

川沿いの道が雑草に占拠されている。雨の中、道なき道を老人が歩いてくる。

+ + +

バス停にて。ふたりの女子高生の会話。
「わたしドイツに留学したいんだよね」
「どうして?」
「だってさあ、わたしの好きなバンドってみんなドイツ語の名前なんだよ。ラルク・アン・シエルも、ディル・アン・グレイもドイツ語なんだよ」
「へえ・・・ そうなん? どんな意味なん?」
「んー、わからんけど」
posted by Dr.DubWise at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月03日

incidents 000

Roland Barthes (1915-1980) Roland Barthes (1915-1980)

ロラン・バルトの『恋愛のディスクール・断章』と『偶景』は高校時代に読んだ。大学時代も何度か読んだし、大学を卒業してからも読んだ。『表徴の帝国』や『エクリチュールの零度』も読んだけど、こんなには読んでない。

偶景(アンシダン、incidents)――偶発的な小さな出来事、日常の些事、事故(アクシダン)よりもはるかに重大ではないが、しかしおそらく事故よりももっと不安な出来事、人生の絨毯のうえに木の葉のように舞い落ちてくるもの、日々の織物にもたらされるあの軽いしわ(プリ)、わずかに書きとめることができるもの、何かを書くために必要となるちょうどそれだけのもの、表記のゼロ度、ミニ=テキスト、短い書きつけ、俳句、寸描、意味の戯れ、木の葉のように落ちてくるあらゆるもの。
たとえば、バルト自身はこんな偶景を書き記している。

 浅黒い若者、ミント・リキュール色のシャツ、アーモンド・グリーンのズボン、オレンジ色の靴下、見るからにしなやかな赤い靴。

 見知らぬ少年が彼の相棒に遣わされて訪ねてくる。《何の用だ? なんで来た?》《本能さ》(別の子は、この前来た時、《愛情さ》といった)。

 高校一年生で未来の体育の先生のアミドゥーはある日曜日の朝、蚤の市のぬかるみの中で出逢ったのだが、貧乏で親切で、レインコートは短かすぎ、大きな靴は色あせてくたびれていて、モロッコ人らしい美しい眼と縮れた髪を持っている。彼は、明日、《モリエールの喜劇性》について《考察》しなければならない。
 (アミドゥーAmidou。私はHの字なしに綴りたい。なぜなら、でんぷんamidouのように甘く、火口amadouのように燃えやすいから。)
タンジールやラバトでバルト自身が遭遇した、事件にもならない事件。
特に、ここには彼のセクシャリテに関した偶景を抜き出してみた。モロッコの埃っぽい空気の中に、汗と精液の淡い匂いがする。

物語性を逃れ続けるテキスト。彼は偶景を「俳句」だという。ロマネスクの種。

偶景/ロラン・バルト偶景
ロラン・バルト Roland Barthes
沢崎浩平、萩原芳子・訳

体裁=単行本: 184 p ; サイズ(cm): 19 x 13
みすず書房
2001-06
ISBN: 4622049945 ; 新装版
by G-Tools
posted by Dr.DubWise at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月28日

incidents 001

キャナルにて

ひどい雨の日、バス停。
見上げると半透明のプラスティックのスレートに雨が打ちつけられているのが見える。
水滴が多くなり、合体し、自らの重みで傾斜を次々に流れ下っていく。

+ + +

あゆむさんは電車を乗り換えたがる。
「急行に乗り換えようよ!」
なぜだろう。ともちゃんに訊くと「速そうなものが好きなのよ」と。
ぼくは思い切り納得した。

+ + +

電車で隣に座った女性。
TSUMORI CHISATOのクレプリのシャツを着ている。白地に女の子の絵が描かれている。天使だろうか。

+ + +

昼休み、公園にて。
ぼくはベンチに座って本を読んでいる。ほどなく隣に誰か座る気配を感じる。
しばらくすると食べ物を咀嚼する音が聞こえ始める。くちゃくちゃ。そうたいして大きい音でもないはずなのに、耳に響く。
ぼくは何故か恐ろしくなる。「隣の誰か」にどうしても眼を向けることができない。

posted by Dr.DubWise at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | incidents | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。